FLOOR COATING NEWS
化学物質48物質に新たな濃度基準値|2027年10月1日適用、フロアコーティング施工会社が確認したい対応
2026年8月31日告示|厚生労働省
厚生労働省は、労働安全衛生規則第577条の2第2項に基づく濃度基準を改正し、アジ化水素など48物質に新たな濃度基準値を設定しました。あわせて試料採取・分析方法を定める技術上の指針も改正され、2027年10月1日から適用されます。
対象物質が主剤、硬化剤、プライマー、希釈剤、洗浄剤などに含まれる場合、フロアコーティング施工会社や材料メーカーは、作業者のばく露を基準値以下に管理するための確認が必要です。
今回の48物質が一般的な住宅用フロアコーティング剤に含まれていると確認されたわけではありません。一方、剥離剤や洗浄剤などの副資材に該当物質が使用される例があるため、施工会社は実際に使用する全液剤の最新版SDSを確認する必要があります。
ただし、48物質がすべてのフロアコーティング製品に含まれるわけではなく、すべての住宅施工現場で濃度測定が一律に必要になるわけでもありません。まずは実際に使用する製品の最新版SDSと施工条件を確認することが出発点です。
ニュースのポイント
8時間または短時間の濃度基準値を新設
告示と改正指針の適用開始日
材料名だけでなく成分名・CAS番号を確認
対象物質と作業条件を基にリスクを評価
今回の改正で何が決まったのか
2026年8月31日付の厚生労働省告示第332号により、リスクアセスメント対象物のうちアジ化水素など48物質について、事業者が守るべき濃度基準値が新たに定められました。関係する技術上の指針も改正され、物質ごとの試料採取方法と分析方法が示されています。
物質ごとに8時間濃度基準値または短時間濃度基準値が設定されました。
確認測定が必要な場合に用いる試料採取・分析方法が物質別に整理されました。
六フッ化けい酸亜鉛(Ⅱ)は、すでに基準がある「フッ素及び水溶性無機化合物」の対象へ追加されます。
今回の改正は、対象化学物質の販売やフロアコーティング施工そのものを禁止する制度ではありません。
対象物質を取り扱う作業で、労働者のばく露を濃度基準値以下に管理するための制度です。パブリックコメントには25件の意見が寄せられ、意見を踏まえた案の修正は行われませんでした。
SDS確認時に照合したい対象物質の例
新たに基準値が定められた48物質には、塗料、溶剤、樹脂、洗浄剤などの分野で扱われる可能性がある物質も含まれます。下表は、フロアコーティングで使用する材料・副資材のSDSを確認する際に名称を照合したい例です。
| 物質名 | 8時間濃度基準値 | 短時間濃度基準値 |
|---|---|---|
| アセトフェノン | 4 ppm | ― |
| α-ピネン | 5 ppm | ― |
| ベンジルアルコール | 2 ppm | ― |
| メチルシクロヘキサン | 100 ppm | ― |
| メチルプロピルケトン | ― | 150 ppm |
| d-リモネン | 3 ppm | ― |
| 水酸化カリウム | 1 mg/m³ | 2 mg/m³(天井値) |
| 水酸化ナトリウム | 1 mg/m³ | 2 mg/m³(天井値) |
※上表は48物質の一部です。数値は25℃、1気圧における基準です。「―」は今回の告示で当該区分の数値が設定されていないことを示します。これらの物質がすべてのフロアコーティング製品に含まれるという意味ではありません。配合の有無は製品ごとの最新版SDSとメーカー情報で確認してください。
8時間濃度基準値・短時間濃度基準値・天井値の違い
濃度基準値は、作業者が呼吸する位置での化学物質濃度を管理するための指標です。表示される時間軸と意味を区別して確認する必要があります。
1日8時間の時間加重平均として超えないよう管理する値。継続的なばく露の評価に用います。
ばく露が最も高いと考えられる15分間の時間加重平均として管理する値。急性影響を防ぐ指標です。
短い時間であっても超えてはならない値。水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどに示されています。
施工会社が2027年10月までに進めたい確認事項
施工会社は、フロアコーティング剤だけでなく、下地処理や清掃・補修で使用する副資材も含めて確認する必要があります。化学物質管理者を中心に、次の項目を自社の作業手順へ落とし込みます。
- 主剤、硬化剤、プライマー、希釈剤、脱脂洗浄剤、剥離剤、補修材を一覧化する
- 製品ごとにメーカーまたは供給元から最新版SDSを入手する
- 成分名、CAS登録番号、含有量を新たな48物質の一覧と照合する
- 記載だけでは判断できない場合は、供給元へ対象物質の有無を確認する
- 該当物質がある場合は、使用量、塗布方法、混合作業、換気、作業時間を含めてリスクアセスメントを見直す
- 代替材料、局所排気・全体換気、作業方法、作業時間などの低減措置を優先順位に沿って検討する
- SDSと評価結果に基づき、呼吸用保護具、吸収缶、保護手袋などを選定する
- 従業員と協力施工店へ作業手順を共有し、教育・保護具使用・点検の記録を残す
- 材料や施工方法を変更したときは、SDSとリスクアセスメントを更新する
ばく露低減は「より危険性の低い材料への代替」から検討します。
基本的な優先順位は、代替などの本質的対策、換気・局所排気などの工学的対策、作業手順や時間管理などの管理的対策、適切な保護具の順です。保護具だけに頼らず、発生源と作業環境から見直すことが重要です。
すべての現場で濃度測定が必要になるわけではない
今回の改正を受けて、住宅用フロアコーティングの全現場で測定が自動的に義務付けられるわけではありません。まず対象物質の有無と作業条件を確認し、リスクアセスメントでばく露の程度を見積もります。
技術上の指針では、濃度基準値を超えるおそれがある屋内作業について、確認測定を行う考え方が示されています。現場ごとに環境が変わる建設作業では、典型的な作業をあらかじめ測定・評価し、その結果に基づく換気、作業方法、呼吸用保護具などをマニュアル化して適切に実施する方法も示されています。
SDS、使用量、施工時間、換気、塗布方法などからばく露を見積もります。
屋内作業で基準値を超えるおそれがある場合は、定められた方法で確認測定を検討します。
評価結果を換気、保護具、作業時間、教育を含む現場マニュアルへ反映します。
注意:マニュアルを作成すれば無条件に測定が不要になるという意味ではありません。自社の材料、作業、施工環境が想定条件と一致し、定めた低減措置が現場で確実に実施されていることが前提です。
「水性」「低臭」「F☆☆☆☆」だけでは判断できない
「水性」「低臭」「F☆☆☆☆」といった表示だけでは、今回追加された対象物質の有無や、施工中のばく露が濃度基準値以下になるかを判断できません。確認には、材料の成分情報と実際の施工条件の両方が必要です。
最新版SDSで成分名、CAS番号、含有量、取扱上の注意を確認します。
混合、塗布、乾燥、使用量、室内換気、作業時間などを具体的に評価します。
換気、保護具、作業手順、教育、記録まで含めて対策の実効性を確保します。
今回の濃度基準は、施工時に化学物質を扱う労働者のばく露管理に関する制度です。製品の販売可否や、施工後の床面・室内環境の安全性を一律に認定する制度ではありません。
よくある質問
今回の改正でフロアコーティング剤が使用禁止になりますか?
対象物質の使用や製品の販売を一律に禁止する改正ではありません。対象物質を扱う場合に、リスクアセスメントを行い、作業者のばく露を濃度基準値以下に管理することが求められます。
すべての住宅施工現場で濃度測定が必要ですか?
一律ではありません。使用材料と作業条件を確認し、リスクアセスメントの結果、濃度基準値を超えるおそれがある屋内作業では確認測定を検討します。典型的作業の評価に基づくマニュアルを用いる場合も、想定条件との一致と措置の確実な実施が必要です。
48物質はすべてのフロアコーティング製品に含まれていますか?
いいえ。製品や副資材によって成分は異なります。商品名や「水性」「低臭」などの表示だけで判断せず、主剤、硬化剤、プライマー、洗浄剤など、それぞれの最新版SDSを確認してください。
消費者は施工会社へ何を確認すればよいですか?
使用する製品名と床材への適合性、施工中の換気、乾燥・硬化時間、入室や入居が可能になる時期、保証内容を確認するとよいでしょう。専門的な測定の要否は施工会社が材料と作業条件に基づいて判断する事項ですが、安全管理の考え方を説明できる会社かどうかは比較の参考になります。
まとめ
厚生労働省は、アジ化水素など48物質に新たな濃度基準値を設定し、2027年10月1日から適用します。物質ごとの8時間濃度基準値または短時間濃度基準値に加え、試料採取・分析方法も示されました。
フロアコーティング施工会社は、主剤・硬化剤・プライマーだけでなく、希釈剤、洗浄剤、剥離剤、補修材まで含めて最新版SDSを確認し、該当物質がある場合は施工条件に応じたリスクアセスメントと低減措置を進める必要があります。
重要なのは、すべての製品や現場を一括りにしないことです。対象物質の有無、使用量、換気、作業時間、施工方法を確認し、必要に応じて測定・マニュアル整備・保護具選定へつなげることが、2027年10月に向けた実務対応になります。
出典・関連資料
本記事は、厚生労働省の告示・通達・技術上の指針と、e-Govの意見募集結果をもとに構成しています。




